OB/OG紹介 – 株式会社メルカリ Diversity and Inclusion Lead:寶納弘奈さん
第21回世界青年の船(以下、SWY)に20歳で参加した寶納弘奈(ほうのうひろな)さんは、異文化コミュニケーションの専門家として、現在、株式会社メルカリのDiversity and Inclusion (多様性と包括・包含。以下、D&I)施策のリードを務めています。異文化コミュニケーションとメルカリでのお仕事について寶納さんにお聞きしました。
異文化コミュニケーションとSWY
将来は国際交流プログラムのスタッフになりたいと考えていた寶納さんは、若者が対象者となっている事業を自ら体験し、運営側の仕事を知るためにSWYに参加しました。
SWYに参加する以前から異文化コミュニケーションへの関心があった寶納さんですが、その関心の原点は幼少期の体験だといいます。親の転勤に伴い、3年間ベルギーで過ごした寶納さんは、現地の幼稚園と日本人学校に通ったものの、幼稚園では言葉が通じず友達も作れませんでした。必ずしも周りからいじめられていたわけではなかったかもしれませんが、周りとのコミュニケーションができなかったので、疎外感を感じていたといいます。その中でも優しくしてくれる子どもがいて、それが、国籍や言語の違いを越え、相手を認めることについて考えた最初の機会だったそうです。
SWYでは様々な文化や人を知る良い機会に恵まれたという寶納さん。一方、外国人青年とのコミュニケーションには困らなかったものの、色んな人の気持ちが分かっておらずおごっていたところがあったと当時を振り返ります。SWYに参加した人々のモチベーションや考えは多様なのに、自分のフレームワークで他者を判断していたといいます。印象に残っているのは、特定の国や文化の価値観を押し付けず、ルールはみんなで作るという感覚とスタッフの寛容な姿勢。また、アイディアがあっても他の人を巻き込み、行動して形にしないと意味がないのを痛感したそうです。 加えて、大学卒業直前にガーナでボランティアした際、参加者の一人がカルチャーショックを乗り越えられず途中帰国してしまったことも、寶納さんの方向性を決める出来事になりました。国境を越え活躍しようとしている人たちが、文化やコミュニケーションの違い、カルチャーショックなどで志を断念しまう現状を目の当たりにして、彼ら彼女らをサポートする必要性に気づいたといいます。
メルカリでの仕事
SWYではなかなか自身のアイディアを行動に移せなかったそうですが、現在はメルカリのD&I施策のリードという大役を務め、多様なバックグラウンドを持つメンバーが働きやすい環境を作るために、人事の制度を整えたり、勉強会や研修を実施したりしています。D&Iを体現できるメンバーを増やすため毎日奔走している寶納さんですが、もともとメルカリには、通訳翻訳担当者として入社。グローバルなテック会社を目指し1000人以上のスタッフがいるにも関わらず、D&I施策が少なく担当者がいないことに危機感を覚え、徐々に異文化コミュニケーション研修を自分のメイン業務へとシフトさせたそうです。どうしたらD&Iのチームができるかを社内でリサーチしたり、エグゼクティブに働きかけたりしたことで、プロジェクトチームが立ち上がり、その後2019年2月に晴れて正式にD&Iチームが設立。このように、自分達でアイディアを出し責任を持って形にすることが評価されるメルカリの環境が、新しいカルチャーを促進する活力を生み出しているのではないか、自分に合っているといいます。
異文化とは? D&Iの重要性
異文化の定義は広く、音楽や食べ物など分かりやすい文化の違いに加え、家族に関する考え、時間やスペースに関する意識、職業倫理感など、目に見えない文化が存在するそうです。したがって、日本人だけのチームでも、個々の多様なバックグラウンドが異なる価値観やフレームワークを生むことも。例えば「もっとしっかり進めてください」や「ちゃんと仕事してください」などの発言がよく職場で聞かれますが、「しっかり」や「ちゃんと」の感覚は人によって違います。そこで、D&Iチームでは、コミュニケーション指標を使ったワークショップを通じ、個々のコミュニケーションスタイルを知るとともに、共通のボキャブラリー作ることで、個々の文化を超えたチームの共通認識を作り出す活動を行っているそうです。
Diversityとはバックグラウンドが多様な人々が同じ空間に存在することを指しますが、それだけでは十分とは言えず、彼らをプロアクティブに巻き込むInclusionの施策が重要だと寶納さんはいいます。同質性の高いチームのほうが、意識決定にスピードがあり、物事が早く進むこともありますが、アイディアがなくなったときに頭打ちになる可能性もあり、多様性がもたらすベネフィットは享受できません。寶納さんにとってD&Iを推進しない社会とは、フル装備のキッチンで、まな板と包丁だけ使って料理して他のリソースをうまく活用できていないようなイメージだといいます。「今までこうだったから」、あるいは「挑戦するのが怖い・面倒くさい」という後ろ向きの理由で新たな挑戦を拒否するのは危険な橋を渡ることに等しく、また、これからの時代、日本の中だけでは生きていくのは難しいため、20年後、30年後にいきなりD&Iのマインドセットへとシフトするよりも今から徐々に社会を変えていく方が有益であると主張します。
今後の展望とOB/OG、参加を検討している方へ
異文化コミュニケーション教育の普及やD&Iの促進は、どこの組織でも求められている上、自分のライフミッション&ライフワークなので、自らが身を置く組織の「畑」は気にしないという寶納さん。産官学どのフィールドに身を置くかによって、仕事のインパクトの見え方は変わってくるため、これからも色々なセクターを渡り歩きたいと思っているそうです。
SWYのOB/OGの仲の良さを超え、外部からも信頼できるようなプロフェッショナル・ネットワークにしたいと考えている寶納さん。ここ数年で発足した「 コレヲキニ! (会員の面白さ・繋がりを再発見しIYEO同窓会機能の活性化を図る取り組み)」にも注目しているそうです。
内閣府事業に参加を考えている人に対しては、「少しでも興味があればやってみること。挑戦してみないと結果が分からないし、成長するための機会を与えられることがいかにラッキーで恵まれているのかを実感して欲しい」とのこと。
D&Iへの情熱がほとばしる寶納さんの今後の活躍にますます期待が集まります。
参考記事;
https://mercan.mercari.com/articles/21193/
https://mercan.mercari.com/articles/14321/
https://careers.mercari.com/jp/diversity/
インタビュー担当:小宮 理奈(第21回世界青年の船事業参加)