OB/OG紹介 – プロフェッショナルコーチ/GiFTシニアダイバーシティ・ファシリテーター:鈴木大樹さん

“コーチング”を通して感じていること

工藤:鈴木さん、本日はお忙しい中お時間をとって頂きありがとうございます。鈴木さんとは文部科学省が展開する、「トビタテ留学JAPAN」の9期合同研修会でお会いし、その時に第40回の東南アジア青年の船のナショナルリーダーをされたと伺いました。まさか事業関係の方とトビタテでお会いするとは想像していなかったので、驚いたのを覚えています。

鈴木さん:「トビタテ!留学JAPAN」の研修でお会いしていたのですね。トビタテ!は妻の辰野まどかが代表を務め、私もファシリテーターとしてジョインしている「一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)」として参加したものです。「一対多」のファシリテーションを提供しています。その一方で「GiFTパートナーズ」という会社で代表を務めていて、こちらではベンチャー企業の経営者に対し、一対一のコーチングを行っています。

工藤:幅広い年齢層、様々な立場の方にコーチングをされておられる中で、共通点として感じられることはありますでしょうか。GiFTパートナーズの鈴木さんのクライアントは、企業の中でも経営者の方々とのことでしたが・・・。

鈴木さん:私が対象としている高校生、あるいは青年の船やトビタテ!の大学生と経営者との共通点を挙げるならば、彼らがモノを語る時、その主語が「私」であるということです。自分自身がなぜ生きるか・どう生きるか、という視点にたって物事を考える立場や年齢なのかなと。

工藤:物事を「自分化」して捉える人が多いということでしょうか。

鈴木さん:そうですね。“他人のせいにしない”ということだと思います。良い意味での自責、と言いますか。悩みは多いのだけれど、自分で生きようとしている印象を受けます。

次世代を担う学生へ

工藤:私が鈴木さんを知るきっかけになった(一社)GiFTの活動の中で感じられていることはありますでしょうか。日本の高校生や大学生に接されていて、どのような印象を持たれますか?次世代リーダー育成という観点からメッセージを頂戴できればと思います。

鈴木さん:まず、大前提として、私は青年育成の場においてジャッジはしません。彼らは、これからの人生の中でどんどん変化・成長をするわけですから、長期的な視点で “海外に出た後に何をするか”の可能性を信じて関わると言うことです。夢を語る段階ではなんでも言えます。でも日本に帰ってくると、普通に、いわゆる敷かれたレールに戻ってしまう。それだともったいないのではないかなと感じます。「~だから、~しなきゃいけない」という概念に縛られることなく、本当の意味で自分の意思で生きてみたらどうだろう~と思うこともあります。

旅の中での「問い」との出会い、「人」との出会い

工藤:これまでお話をお伺いしてきたように、鈴木さんはコーチングをお仕事にされていらっしゃいますが、独立前コーチング企業に入社されたのち、2年間の世界一周の旅に出られています。退職されてまで、旅に出ようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

鈴木さん:もともと海外に対して漠然とした憧れがあって、大学4年生の時に東南アジア青年の船にも乗りました。でも長期では滞在したことが無く、休職してアメリカに留学したのが初めての海外生活でした。念願の留学を終えて帰ってきた時、これで本当に世界に触れたことになるのかな、と疑問を抱いたんですね。当時は留学=アメリカ、海外=欧米というイメージが強い時代でしたが、世界はアメリカだけではない、ヨーロッパだけではないわけです。

工藤:そして、会社を退職されて世界一周の旅に出発されたのですね。旅の中では毎日が新しい景色の中で新しい人々や文化に出会われると思いますが、旅の中ではどのようなことを考えておられましたか?

鈴木さん:そうですね、旅をする中では孤独な時間が膨大にありますから、それは自分を見つめる時間になります。それが私にとってとても大事なものだったと思います。その時間の中で、自分の声が聞こえるようになってくる。本当は何をしたいのか?このままで良いのか?と。

工藤:規模は違うかもしれませんが、私も青春18切符で旅をするのが好きでして、孤独の時間というのはとてもよく分かります。高知県を移動していた時、電車の中はとても静かで、車窓から四万十川の流れを見つめながら、ぼーっと・・・ただ静かに、自分は何をしたいんだろう、と思い浮かべていたことがあります。ただそのような時に沢山「?」は浮かぶのですが、答えを見つけることは難しく・・・。結局ぼんやりしたままと言いますか、分からないまま日常に戻ってしまうことがよくあります。

鈴木さん:問いは問いのままで良いのではないでしょうか。きっと答えを出す事よりも、問いが湧き上がってくる、そのこと自体に価値があるのではないかと思っています。

工藤:なるほど・・・たしかに、日常の中ではそのような問いすら埋没してしまっていますね・・・。疑問を感じる暇もないままルーティンをこなしていると言いますか、問いを問いとして感じる余裕すら持てない場合が多いのかもしれません。

鈴木さん:そうですね。他には、私が旅をしていたのは38歳の時だったのですが、旅の中で出会うのは20代の若者が多かったんですね。彼らと話しをしていると、同じ目線で対話してくれる大人を求めているように感じたんです。これが青年育成の道に進むきっかけになりました。自分の価値観を押し付ける大人ではなく、経験から1つの例を話してくれる大人、と言いますか。そういうものが求められていると感じました。

工藤:まさに「対話」でしょうか。きっとそれは友人間でも、家族間でも同じことが言えるのかもしれませんね。違う人間なのだから、感じること、見ているものは異なるのが当たり前で、違うという前提をお互い尊重しつつ、“どうしてそう思うのか”を深堀りしていく・・・。私もそのように人と話してみたいと思います。私はこう思う、というのが先行してしまうことが多いので、もしかしたらそれは私の価値観でその人をジャッジしているだけなのかもと気づきました。

東南アジア青年の船に参加して

工藤:今まで、旅が鈴木さんに与えた影響についてお話を伺ってきましたが、東南アジア青年の船も、一種の旅と言えるかもしれません。

鈴木さん:東南アジア青年の船の中でも、“同じ目線でいること、一緒にいることができること”を学んだように思います。例えば船の中では、少なくともルームメイトと1カ月以上寝食を共にするわけですが、そこで国や文化が違っても友達になれることを実感しましたね。何か悩んでいるとき、アドバイスが欲しい時、ただ話を聞いてほしい時、隣にいてくれるのは日本人ではなかったわけです。これこそが国際交流の価値なのではないかと個人的には思っています。

工藤:とても分かります。言語の面でいえば、母語を共有する日本人同士の方が伝わりやすいというのは確かにあるのですが、実際今でも忘れられない言葉をくれたのは他の国からの参加青年だったりします。

鈴木さん:船の中でずっと同年代の人たちと生活していると、けんかをするときもある。でもそれで良いと思うんですね。国が違っても、言語が違っても、本気でぶつかありあって、そして次の日には何事もなかったかのように食堂で一緒に朝ご飯を食べていて。友だちなんだなと実感する。同じ目線で、一人ひとりの人間同士としていられる空間のように思います。

事業OBOG、参加を検討している方々へ

工藤:鈴木さんは第19回で参加青年として、第40回ではナショナルリーダーとして、2回乗船されていますが、最後に他のOBOGの方々、そして参加を検討されている方へのメッセージをお願い致します。

鈴木さん:・・・(しばし無言) 検討する必要ある!?(笑) 行くしかないですよ。応募するしかない。金銭的な面ももちろん考える必要があるとは思いますが、“経験しないと分からない経験”を得る経験、になると思いますね。

工藤:たしかにその通りですね。どうだった?と聞かれても一言で形容するのはかなり難しく、乗ればわかる!まず乗ってくれ!といつも言いたくなります(笑)

鈴木さん:そうそう。でもまず他のOBOGの方々に対しては、私も含めてですがこの繋がりを活かしきれていない人が多いのかなと感じます。魅力的な方ばかりですから、是非どこかでご一緒できたらと思います。この事業の人脈というか、繋がりは、参加当時には見えなくてもじわじわ効いてくるものなのかなと感じています。

鈴木さん:これから乗船する人たちへは、まずドアを開ける勇気を持とうということを。人とつながる喜びの深さを実感することになると思います。そして、きっと今までとは全く違う尺度で世界が見えるようになります。結局は自分次第というところはありますけどね。でももしかしたら、この記事を読んだ時からあなたのSSEAYP(セアップ、東南アジア青年の船)は始まっているのかもしれませんね・・・。ようこそ!

鈴木大樹さんのプロフィール

インタビュー担当:工藤 清香(第45回東南アジア青年の船事業参加)

関連記事一覧