北信越ブロックイベント密着取材
富山県飯田さんインタビュー
2022年10月2日(日) 星槎国際高校富山学習センター 北信越ブロックイベント富山大会2022
不確実性の高い現代において、自分たちの未来を自分たちで構想し、その実現に向けて自分たちで計画を作成・実行することは社会のあらゆる分野で重要である。自分たちは何のために何を目指して何をどのように進めていくべきか、近年、業種を問わず多方面でこの種の議論がなされている。
IYEOでも未来構想から課題整理、計画立案を経てその実行までを一気通貫でやり抜く人材育成のための選抜型研修プログラム「未来創造会議」が2021年度より始まったことは記憶に新しい。未来創造会議の参加者たちは、自分たちで作成した未来創造計画を今も実際に自分たちで実行しており、その中のいくつかはIYEOの社会貢献活動として立ち上がろうともしている。
このようにIYEOも自律的な運営による社会活動団体に生まれ変わろうとしている大変革の最中、富山県は「未来デザイン」をテーマとした北信越ブロックイベントをデザインし、開催に向けて準備を進めてきた。実行委員会の立ち上げからわずか3カ月という異例の短期間で開催当日の朝を迎えており、今までにない内容が今までににないやり方で組み立てられてきたことが伺える。この短い期間に未来デザインの物語がどのように生まれ、どのようにプログラムが創られていったのか、イベント開催当日に実行委員長兼富山県会長の飯田さんに話を聴いた。
まちづくりイベントで「未来デザイン」のデザインが生まれた
―――今回のイベントの準備には7月から着手されたそうですね。その一方で実際にはそれ以前の期間で、構想が動いていたともお伺いしています。未来デザインという着想の経緯は具体的にはどのようなものだったのでしょうか。
昨年12月に元同僚で今は起業家と市民のマッチング事業を営む友人からまちづくりイベントに誘われたのです。彼曰く「まちづくりと言えば飯田さんでしょ」とのことで、どうやら彼の中ではそういうことになっていたようですね。そのイベントは中央通り商店街で開催されていて、職場からすぐ近くだったため行ってみたのです。そこでは商店街を活性化するアイデアについてのディスカッションが催されていて、ちょうどグループワークの発表が行われていました。そこで講評されていた方が、若者のひねり出したアイデアに対し、瞬時に、的確に、実現性のあるコメントを次々と繰り出していく姿を目の当たりにし、なんてすごい方なのだろうと思ったのです。それが今回のブロックイベントで基調講演をお引き受けいただいた前田さんとの出会いでした。恥ずかしながら、この時点では前田さんのことも、前田薬品工業のことも、何も知らなかったのですが・・。何の気なしに訪れたまちづくりイベントでのこの出会いが、私の人生観と深く結びつき、その後の「未来デザイン」をテーマとするブロックイベント構想が鮮明になっていくことになります。
自分の直感を信じて前田さんに会いに行った
―――前田さんとの出会いは日頃からまちづくりや若者といった自分のテーマを持ってアンテナを張っていた飯田さんだからこそですね。そこからどのようなやり取りを経て基調講演の承諾を頂けたのでしょうか。
まちづくりイベントでの前田さんの印象は私の記憶に鮮烈に残りました。そのため、前田さんの姿が今年度の富山県開催が決まっていた北信越ブロックイベントでの基調講演者の枠に自然と収まるまでに長い時間はかかりませんでした。やり取りについても、繰り返しの議論を経たわけでもなく、決め手となったのは言わば私の直観でしょうか。今年の3月、「前田さんにお願いしよう!」と決め、前田薬品工業を訪問して前田さんと初めて面談し、未来やまちづくりに対する向き合い方について意見交換。意気投合し、その場で基調講演を快諾いただきました。まちづくりイベント当日の前田さんは登壇者でしたのでこの日の前田さん訪問まではお互い面識がなかったわけですが、言葉を交わしたことがなかったことが不思議なくらい、スムーズに進みましたね。「未来デザイン」をイベントの開催テーマとする構想の輪郭が見えてきたのもこの頃からです。前田さんはヘルジアンウッドなどの事業により新たな未来を富山県に切り拓こうとされており、まさに未来デザインの実践者でした。
―――随分と早くに基調講演者を決められたのですね。その後、準備開始までに3カ月以上の時間が空くことになります。その期間ではどのようなことをされていたのでしょうか。
その後はしばらく分科会の内容を構想したり、それに必要な情報収集したりする期間としました。私は長年富山県に暮らしていますが、このような大きな機会でもないと、なかなか多面的に富山県と向き合うこともありません。私にとっても意図的にこのような期間を設けたことでその後の分科会の内容が厚みを増し、イベント全体の質の向上にもつなげられたのではないかと、後付けかも知れませんが、今となってはそのように思います。
未来デザインの実行者を身近なところで探し求めた
―――静かな助走期間だったのですね。その後、何によって沈黙が破られ、実行委員会が開始されたのでしょうか。
直接のきっかけは6月の読売新聞朝刊に掲載されていた、地元ではボードゲームで有名な杉木貴文さんの記事を読んだことでした。実は杉木貴文さんは富山県役員の杉木芳文さんの息子さんなのです。ですから、お父さんの方の杉木さんのお話を通じて、以前からボードゲーム好きの息子さんがいらっしゃることは知っていたのですが、新聞記事に書かれていたボードゲームの競技大会やボードゲーム専門店の開業、ボードゲームを通じた未来社会への貢献ビジョンといったところまでは知らなかったのです。新聞記事の圧倒的な説得力もあり、聞いていた話よりも遥かにすごいじゃないかと驚き、すぐに杉木さんに息子さんを紹介していただきました。詳しい話を聴くうちに、杉木さんも未来デザインの実践者であると確信し、そこから分科会講師をお願いするところまではとんとん拍子で進みました。そのタイミングに併せて7月に実行委員会も立ち上げ、開催当日に向けた準備も並行して進めていきました。
―――未来デザインの実行者は身近なところにいたのですね。それ以外の分科会についてはどのように決まっていったのでしょうか。
少し古い話となりますが、県内在住の外国にルーツを持つ若者の支援事業を手掛けるNPO法人アレッセ高岡の青木さんと私は、子供の権利条約フォーラムが2020年に富山県で開催されたときの実行委員会を通じて知り合いました。私はそのフォーラムでポスター発表を担当しており、そのときに掲示されていたポスターに青木さんのNPOのことが紹介されていたのです。ちょうどそのとき、私の学校にパキスタン出身の生徒がいて、私自身まさにそういった団体の支援を必要としていたため、ポスターに書かれていた連絡先を見て、青木さんに相談のメールを送りました。青木さんとのご縁はそこから始まっています。ただし、それは2年前のことだったので、今回のブロックイベントの内容を構想する上で、青木さんを初めから候補として考えていたわけではありませんでした。
青木さんに分科会講師をお願いすることになったきっかけは、実行委員会で分科会の内容について話をしているときに、富山県役員の川除さんが外国にルーツを持つ子供たちの学習支援の必要性を力強く訴えておられたことです。そこで私が2年前のことを思い出し、青木さんに連絡を取ってみたところ、やり取りが再び始まりそのまま分科会講師の話にも発展しました。
―――杉木さんにしても、青木さんにしても、飯田さんの身近な関係者と未来デザインの構想を結び付けていったのですね。3つ目の分科会はどのようにして生まれたのでしょうか。
富山県に長年根付いて未来デザインを実践して来られた方2名が講師に決まったため、3つ目の分科会では会員にも馴染みのある内閣府事業参加経験を活かして未来デザインに取り組む方を講師としてお招きしたく考えていました。そんなとき、富山県役員の日南田さんから「SSEAYPと青年海外協力隊の両方に参加して国際協力のキャリアを一貫して歩んでいる方がいる」との情報が入り、日南田さんに紹介をお願いしたのです。それがJICA北陸の富山デスクで国際協力推進員を務める松山優子さんでした。松山さんは、富山市民国際交流協会で働く日南田さんと日頃からやり取りをしておられ、今でもSSEAYPへの思い入れが強く、国際協力を軸にしたブレのないキャリア形成をされてきていたため、今回のテーマに適任と感じ講師の引き受けをお願いすることにしました。両方の事業に参加される方は珍しいですし、キャリアの一貫性についても多くの会員の目を引くものです。未来デザインの実践者としての大きな意志の力を感じました。
価値の創り込みに集中できる環境を早くに整えた
―――どの方も身近なところから探されてきたのですね。講師陣が決まってから本日までの準備はいかがでしたか。また、本日の意気込みを是非お聞かせください。
今回は開催テーマも講師陣も私が原案作成を担当しており、これまでにお話ししたように実行委員会の立ち上げ以前の段階でイベントの基礎をある程度固めていたため、実行委員会を立ち上げてからの準備は非常にスムーズに進めることができました。準備がスムーズに進んだ理由は他にもあり、今回は私の勤務先の高校で開催できたことが非常に大きかったです。当校では遠隔授業の実施に必要な機材をすべての教室に完備しており、初めからライブ配信に対応可能な状態でした。更にはそれらの機材の運用保守を担当している教員が実行委員会に加わってくれたことで、私たちはプログラムの作り込みだけに時間を割くことができたのです。
今回のイベントは少人数かつ短期間でコンパクトに仕上げたものですが、そこには未来デザインの実践者の物語が緻密に練り込まれおり、参加者の皆さんには未来創造の実践のための具体的なヒントをお持ち帰りいただけるはずです。IYEOが強みとする国際交流を活かし、それを社会貢献へとつなげるため、未来デザインの手法による未来創造を一緒に進めていきましょう。
>>後編へ続く