＃I am a peace warrior　第4弾　マビニ・ナショナル・ハイスクール（フィリピン）訪問

第45回東南アジア青年の船参加青年は、事後活動の1つとして折り鶴の共同制作を通じて平和作りに貢献しています。

これまでの活動：
＃I am a peace warrior　第1弾
＃I am a peace warrior　第2弾
＃I am a peace warrior　第3弾

第4弾としての活動の概要を教えてください

　フィリピンの小さな田舎町にあるマビニ・ナショナル・ハイスクールという小学校で、現地の子供たちに日本の折り紙について紹介するとともに、実際に一緒に折り鶴を制作し、折り鶴にまつわる実話を紹介することで、平和についても考える授業を行いました。

今回の訪問の経緯を教えてください

　もともと昨年の夏季休暇に、ダバオ在住の友人であるアレックス（第45回東南アジア青年の船参加青年）を訪ねる約束を交わしており、訪問に先立って突然アレックスから「地元の母校の小学校で、美術を教えてみないか？」とオファーを受けたことがきっかけです。大学で美学美術史学を専攻し、現在は各国の美術教育に関心を寄せている自分にとって、このオファーはまさに願ってもない機会であり、“Sure, I will !!”と、ふたつ返事で引き受けました。そこから実際にダバオに渡航するまでの約２か月をかけて授業内容を検討し、準備を進めてきました。

実施した授業の内容とその意図について教えてください

　授業においては、まず初めに折り紙の芸術文化について、連鶴や久寿玉などの千代紙で制作した実際の作品を交えつつ紹介した上で、今回の講義のテーマでもある折り鶴について触れ、千羽を束ねて千羽鶴とし回復祈願や平和祈念といった意味をなすことも紹介しました。そして、実際に千代紙を用いて折り鶴を１人１つずつ制作し、折り鶴にまつわる実話（広島で原爆により被爆した佐々木貞子さんの生涯について：闘病生活の中で多数の折り鶴を遺し、現在は平和の象徴として世界各地の美術館や博物館に収蔵されている）を語り、子供たちに真の平和とは何か考える機会を提供しました。

　今回のオファーを受けた当初、自分には子供たちに何を伝えられるだろうかと自問した結果、やはり自分の専門分野である美術を通じて、無から有を生み出す創造の悦びや驚きを伝えたいと思い立ちました。そして、子供たちにも親しみやすい造形芸術である折り鶴の制作に主眼を置くことにしました。ただひとつ、何としても、折り鶴を制作し終えた後に「楽しかった。」としか感想が残らないような、内容の薄っぺらい授業だけは避けたかった。そこでSSEAYPのディスカッションで学んだストーリー・テリングの手法を用いて、先述した折り鶴にまつわる実話を併せて紹介し、より一歩踏み込んだメッセージ性の高い授業を目指しました。

参加した生徒の反応はいかがでしたか。また教師として教壇に立った感想も教えてください

　本当に子供たちは純粋で無邪気な反応を見せてくれました。例えば、３０ピースの折り紙で作った久寿玉を小箱から取り出した際には、思わず感嘆の声が漏れ出ていましたし、折り鶴の制作では、わくわくした表情で高い集中力を発揮してくれました。また、折り鶴に関する実話を語る私を見ていた子供たちの涙に濡れた大きな瞳は、今でも鮮明に覚えています。

　授業当日は緊張のため、朝からそわそわしていましたが、小学校に到着すると自分が担当するクラスの子供たちが日章旗を大きく振りながら、笑顔で出迎えてくれたのが印象的でした。そして、授業の冒頭に日本の楽曲（米津玄師「パプリカ」）を日本語で歌って歓迎してくれ、そのお返しにと、自分が唯一歌えるフィリピンの国歌を子供たちと声を合わせて歌い、歌い終える頃には、先程までの緊張はどこへやら、お互いの気持ちがひとつになっていくのを感じていました。そのため、たとえ100パーセントお互いの言葉が理解できていなくても、精神的なレベルで繋がっているという手応えが、教壇に立つ私に自信と勇気を与えてくれました。

折り鶴を制作した際の様子について教えてください

折り鶴の制作の際には、あらかじめ日本で調達しておいた、十二月からなる四季折々の風景が印刷された花札模様の千代紙を１人１枚ずつ配布し、ひと工程ずつ、全員が折り終わるまで時間をとって、時に手を添えたり、修正を加えたりしながら進めていきました。中には勘の良い子供もいて、「次はきっとこうするんでしょ！？」と次の工程を自分なりに見出していたり、「ここはね、こうやるんだよ！」と折り方が解らない他の子供に、私に代わって手助けをしてくれた子供もいました。時間こそかかりましたが、無事に自分の折り鶴を完成させると、子供たちは自分で折った折り鶴を手に、目を輝かせて破顔一笑、大歓びではしゃいでいました。